近年、自動車ボディに対する超高張力鋼板(980Mpa 超級鋼材の俗称)の採用が活発化したのに伴い、補修溶接における溶接部や熱影響部の強度低下の問題がクローズアップされていますが、その原因は複合的です。
たとえば超高張力鋼板を従来の溶接材料で半自動溶接する場合、溶接金属の収縮によるひび割れや熱影響部の著しい強度低下など溶接欠陥の問題がよく指摘されますが、実のところその発生確率は作業者の技量に大きく依存しています。
つまり溶接技術や材料の知識がある一定のレベルを超えている作業者が溶接した場合は何ら問題が発生せず、技術や知識レベルが未熟な技術者が溶接した場合はひび割れが発生するなど、溶接欠陥の発生には大きな個人差があるのです。
溶接材料の性質を改良して個人差を吸収できる溶接材料は作れないものか・・・。
その思いのもと開発されたのが、超高張力鋼板対応型の半自動溶接用ワイヤEC-300です。
【1】添加元素の働きが組織変化を抑制するので、自動車ボディに使用されているほとんどの鉄鋼材 料(炭素含有量2%以下のもの)が安全に溶接できます。
【2】溶接金属は、溶接直後で約890Mpa(軟鋼用ワイヤの約2倍)、自硬硬化後で最大約1100Mpaという高い硬度を実現しています。
【3】溶接金属の加工硬化特製により、優れた疲労強度特性を実現しています。
【4】合金成分中クロムが30%以上を締めているので高い耐食性を実現しています。
【5】溶接金属の凝固速度が母材より遅く、冷却時の収縮を抑える(従来の約5分の1)ので、優れた耐歪み性(従来の約半分)を発揮します。
【6】低い電圧電流で使用可能なため溶融部が局所化され、その結果、HAZ部(熱影響組成変化部)の発生が最小限に抑えられます。
【7】材料の融点が従来の軟鋼用ワイヤより約250℃低いので、ぬれ性が高く溶接が簡単です。
【1】銅メッキレスを実現しているので、メッキによる環境負荷をワイヤの製造段階から低減しています。
【2】シールドガスに炭酸ガスではなく、アルゴン系混合ガスを使用しているので、作業時のCO2排出量を5分の1以下に低減出来ます。